ふたりの通関士に聞きました。
〜私が通関士になるまで〜

輸出・輸入が関わる物流の仕事には、様々な必要書類の
作成や手続きが必要です。
通関士は、荷物が税関を通るために必要な業務の代行を
行います。通関士になるためには、資格が必要です。
今回はふたりの通関士にお話を伺いました。
ひとりは大学在学中に資格を取得。
もうひとりは、働きながら、資格を取得。
通関士になろうと思ったきっかけや思いを聞きました。

大学在学中に通関士の資格を取得

国際物流事業本部 
通関部 東日本通関課 航空輸出通関係

山本さん

2020年入社※所属は取材当時の内容です。

2019年、大学4年生時に通関士試験に合格。
2020年に新卒採用にて西日本鉄道株式会社 国際物流事業本部に入社し、通関部 東日本通関課航空輸出通関係に配属。配属当初は各営業所からの通関指示に従い申告書の作成に取り組む。2022年(入社3年目)の秋に通関士の確認を受け、通関士として審査を少しずつ始める。現在は入社5年目となり引き続き申告書の作成と通関士審査の両方に従事している。

入社後に働きながら通関士の資格を取得

国際物流事業本部 
通関部 東日本通関課 成田空港通関係

竹本さん

2019年入社※所属は取材当時の内容です。

2019年、新卒採用にて西日本鉄道株式会社 国際物流事業本部に入社。成田空港営業所に所属し、お客さまからの検疫・通関依頼の受注や通関後の配送手配・お客様対応などのカスタマーサービス業務にも従事。2020年からは新設された通関部の所属となり、植物検疫・動物検疫・食品届の対象品をメインに検疫申請や申告書作成に従事。2022年度通関士試験に合格し、2023年からは通関士として書類の最終審査業務にも従事。

通関士を目指したきっかけや理由を
教えてください。

大学在学中に通関士の資格を取得

就職後、通関従業者を経て、3年目にして
通関士に。夢が叶いました。

大学の在学中に通関士になりたいと思った理由を教えてください。

大学の講義の一つに、通関士試験についての講義があり、受講したのがきっかけです。もともとは貿易に興味があったのですが、当時は日本と海外をつなぐ仕事という漠然としたイメージしかなく、通関士が何かも知らずに受講しました。講義を受けているうちに通関士の仕事内容が少しだけわかり、興味を持ち、本格的に通関士取得に向けての勉強を始めました。貿易と言えばグローバルな仕事で、英語が喋れないといけないイメージがありますが、私はどちらかと言うと英語が苦手な方だったので、そうであれば通関士の資格を取って、将来は通関士として海外と繋がりたいと思っていました。

資格を取るために、どんな工夫をしましたか?

ほぼ独学で勉強したのですが、特に工夫といった工夫はありません。どの資格の勉強でもいえることですが、勉強をすればするほど点数が上がるので、毎日最低5時間は机に向かって問題集や過去問をひたすら解くようにし、通学の電車の中でも小さい問題集を解きながら通学をしていました。大学3年生から勉強をはじめたので、2年ほど通関士の資格を取るために勉強に没頭しました。分からない問題は参考書を見て理解をするようにし、通関士試験前には問題集や過去問題の正解率を100%近くまでなるようにしました。また、いきなり通関士試験本番だと時間の配分や緊張で凡ミスをする可能性がありましたので、慣れるためにも本番環境に向けての対策として、模擬試験を3つほど受けてから資格取得試験に臨みました。

資格を取るために、どんなことが辛かったですか?

通関士の勉強を始める際に、1冊1000ページほどある辞書みたいな分厚さの参考書と問題集(2冊で2000ページほど)を使用していたので、参考書を読んだり、問題集を全部解くのにも時間がかかり、終わりが見えず辛かったのを覚えています。また、学生で通関のことは全く知らないため、通関士試験の中でも特に実務の科目が全く分からず想像もしにくく、理解して解けるようになるまで苦労しました。(通関士試験は3科目あり2科目は法律系で1科目が実務)

入社後に働きながら通関士の資格を取得

資格を持つことで仕事の奥行きが広がり、
やりがいが強くなる。

通関士になろう・資格を取ろうと思った理由を教えてください。

通関業務に従事するなかで、より深い知識を身に着けたいと考えるようになったことが通関士を目指すきっかけです。部内でベテラン通関士に試験問題をご指導頂く勉強会もあり、そこでのやり取りも通関士試験合格の励みになりました。

働きながら、資格を取るために、どんな工夫をしましたか?

練習で間違えた問題の解説を読み、間違えやすいポイントや知識不足な点は参考書に書き込みを行い、自分なりの参考書をつくっていきました。限られた時間の中で合格を目指す際に、効率よく知識を吸収する手段になったと感じています。

資格を取るために、どんなことが辛かったですか?

試験日が近づくにつれて、試験日までの日数とやるべきことの量のバランスが取れておらず、焦りを感じることもありました。思い切って休日の夕方までは好きなことをして過ごすなど、メリハリをつけて試験勉強に臨むことが重要だったかと思います。

「通関士になってよかった」と
思うことはなんですか?

業務が立体的になり、仕事に対する
意識がより高くなりました。

通関士として仕事をできるようになったことで、通関士になる前に比べて仕事への責任が大きくなっていきました。業務を進める上で商品や法令に関する知識を蓄える必要があり負担は増えましたが、今まで何気なく作成していた書類でも見直す機会が増え、より適正な業務をするように心掛けるきっかけになりました。通関士になったことで書類上の確認だけでなく、業務としてより立体的に仕事ができるようになってよかったと思います。入社の時からの目標である通関士としてのスタートラインに立つことができ、少しでも通関士の先輩方に追いつけるように、日々勉強する意識が高くなりました。

輸出・輸入に、より深く関わることができ、
達成感が大きくなりました。

品物を輸出・輸入する際に税番と呼ばれる品物に応じ定められている番号を選び申告書を作成しますが、取扱いが初回の品物など、タリフ(税番が掲載されている厚さ6センチほどの本)や解説書を何度も見返したり、先輩などにも相談しながら、申告書を作成し、税関へ申告します。無事に輸出・輸入許可になった時は大きな達成感が得られます。また街中で自身が取り扱った商品を見かけた時も、達成感を感じられる場面の一つです。

現場経験を経て、実際の仕事の動きや
流れを把握することで
はじめて通関士の資格が活きてくる。

今の仕事から学んだことや想いを
ひとことで言うと?

学ぶ姿勢

「学ぶ姿勢」を大切に日々仕事をしています。通関をする上で商品の知識・統計品目番号を決定する知識や法令の知識は必要不可欠なものとなっております。しかしながら、5年目でもまだまだ分からないことが多いので、自分で調べたり、自分の意見を持ったうえでベテランの先輩通関士に相談しながら解決したりと日々学ぶようにしております。学ぶことにより適正な通関手配にも繋がり、また身につけた知識を後輩などにも説明することが可能となり通関業者としての質の向上にも繋がりますので「学ぶ姿勢」を大切にしております。

情報共有の重要性

成田空港の通関係では、検疫申請・検疫作業・申告書作成といったように、一つの案件に複数人が関わります。どこかのステップでイレギュラーが起こった際には、係内で情報を共有し、円滑に輸入手続きを進められるように心掛けています。また、取扱いの品目や関わる法令も多岐に亘りますので、制度改正や業務上の変更点があれば、素早く係内へ展開しお互い知識の底上げを常に意識することが重要だと感じています。

たくさんの人たちの細かい目配りと
業務への思いが、
市場で
安心して購入できる商品を支えている。

輸出や輸入は、財務省(税関)だけでなく農林水産省(動物/植物検疫所)や厚生労働省(輸入食品を審査する食品監視課)など様々な国の機関が関わってくる業務でもあります。例えば、商業施設で海外から輸入した植物を販売するとします。植物ひとつの輸入でも、それを梱包したり、運んだりする他にも、検疫という作業があります。「植物に混入物が無いか。病害虫の付着がないか。」など細かいチェックを行います。検疫合格となった植物は、その後の税関審査(申告価格の確認など)を経て、許可を得て初めて市場に出ることが許されます。通関士は検疫作業にも関わります。ひとつ数百円の品物でも、たくさんの人たちの細かい目配りと思いにより支えられています。市場で当たり前に安心して購入できるのも納得です。